電気料金プランの見直し検討、再び
以前の記事「電力会社を切り替えた ~ ENEOSでんき から アクアエナジー100へ」で書いたように、我が家は2022年の11月に東京電力のアクアエナジー100という電気料金プランに切り替えた。
その後、2023年7月に料金改定があり、その時点での電気料金プランの比較記事「東京電力 2023年値上げ後の従量電灯B・スタンダードSとアクアエナジー100の比較」を書いた。アクアエナジー100は2023年1月に新規受付を終了したが、私は現在でも継続中である。
前回の記事から既に2年近く経っており、東京電力はその間の2024年4月に料金改定している。そこで、再度、電気料金プランの比較検討をしてみようと思う。
なお、本記事では、東京電力エナジーパートナー社を「東京電力」、それと新電力会社を合わせた全ての小売電気事業会社を「会社」と記載している。
また、電気料金プランや単価は全て東京電力エリアのものである。
また、本記事の内容(特に電気料金)は、私が個人で調べ単価などの情報を元に計算したものであり、私が利用しているアクアエナジー100以外は実際の料金によるチェックはできていない。従って、金額が実際と若干異なっている可能性もあるので、契約を切り替える際にはご自身で各社に確認いただきたい。例えば、後述のグリーンオクトパスはサイトで電気料金を試算できるが、私が各単価から積み上げた金額より若干(300円以下)高めの金額となる。このように少額の差異は他の電気料金プランでも発生している可能性がある。
もし、間違い等があれば、コメントで指摘いただけるとありがたい。
細かい話だが、料金差の原因として1つ思いつくのは、後述するように月単位で変わる単価も多いのだが「N月の単価」といった場合、それが厳密に使用日単位で適用されるのか、検針月に適用されるのか、という点である。例えば私の(東京電力の)場合、現在3月8日~4月7日(31日間)の使用に対する料金が4月検針分として請求されるが、全て4月の単価が適用されている。
一般に、電気料金の計算式は以下のようになっている。(東京電力「燃料費調整制度とは」より引用)
ここで、何点か補足しておく。
- 電気料金単価の部分が電気使用量に応じてかかる電気料金の本丸で、その月の使用量(kWh)を、120まで、120~300、300以上の3つに分け、それぞれで別の単価を設定している「三段階料金」プランが多い。参考「電気料金の「三段階料金」とは?料金表の見方をシミュレーション」
- 燃料費調整単価とは、原油や液化天然ガス価格の変動を調整するためのもので月単位で変動する。会社によっては、この燃料費調整単価と後述する「国の補助」を合算したものを燃料費調整単価と呼んでいる場合もあるが、本記事では、国の補助を除いたものを燃料費調整単価と記載している。なお、燃料費調整単価は会社や地域、電気料金プランによって異なる場合がある。
- 燃料費調整単価の代わりに電源調達調整単価を使う会社もある。電源調達調整単価とは日本卸電力取引所(JEPX)で取引されている価格を反映させたものであり、会社や地域、電気料金プランによって値は異なり、単価の変動周期も30分単位~月単位など様々である。
なお、アクアエナジー100のように、燃料費調整や電源調達調整のどちらも行わない(単価が0の)電気料金プランもある。 - 再生可能エネルギー発電促進賦課金単価とは、再生可能エネルギーの買取りに要する費用を電気料金に反映するためのもので、毎年5月に見直される。全ての会社や電気料金プランで一律である。
上記の計算式に記載されていないが、他に電気料金に影響を与えるものとして、国の補助と容量拠出金というものがある。
- 国の補助とは、燃料費高騰による電気代上昇の軽減措置として国が実施したもので、2023年2月分から2024年6月分に対する「電気料金激変緩和措置」、2024年9月分から2024年11月分および2025年2月分から2025年4月分に対する「電気・ガス料金支援」での割引を指す。これは、全ての会社や電気料金プランで一律である。
- 容量拠出金とは、将来の電力供給能力を確保するために負担する費用で年1回更新される、全ての会社や電気料金プランで一律の値である。詳しくは「容量市場とは? 開始時期や目的、仕組み、容量拠出金について徹底解説。」参照。ただし、これを電力料金計算において、「容量拠出金単価×電力使用量」として明示的に加算する会社と、加算しない(他の料金で吸収する)会社があるので紛らわしい。
補足が長くなったが、ここからが本論である。
2025年5月現在の各社、各プランの、契約容量40Aでの三段階料金の単価は以下のようになっている。
| 東京電力 | TERASELでんき | オクトパスエナジー | シン・エナジー | ||||
| アクアエナジー100 | 従量電灯B | 超TERASEL東京B | TERASEL東京B | グリーンオクトパス | きほんプラン | ||
| 基本料金(40A) | 2347.00 | 1247.00 | 1247.00 | 1201.24 | 1183.40 | 1061.41 | |
| 電力量料金 (kWh単価) |
~120 | 23.66 | 29.80 | 29.80 | 29.00 | 18.98 | 19.67 |
| ~300 | 23.66 | 36.40 | 34.26 | 35.34 | 24.10 | 24.78 | |
| 300~ | 30.40 | 40.49 | 35.64 | 39.26 | 27.44 | 27.71 | |
ここでは、東京電力以外に以下の会社、電気料金プランを掲載している。
- シン・エナジーの「きほんプラン」は、エネチェンジの電気料金のシミュレーションで、私の条件(契約容量40A、2025年4月の使用量 400kWh)で一時的な特典金額を除いた年間の電気料金が最も安かったプランである。なお、シン・エナジーのプランはJPEXの取引価格に連動した電源調達調整を採用している。
- TERASELでんきは、伊藤忠エネクス社が2017年に開始したサービスで、超TERASEL東京Bプランは、エネチェンジのシミュレーションでシン・エナジー社の各プランの次に安かったプランである。「超」がつくプランは電気使用量が多い人向けとのことで、参考としてそうではない「TERASEL東京B」も記載している。
- オクトパスエナジーは最近よくCMで目にするので、私の条件に最も合いそうなグリーンオクトパスプランを記載した。
それぞれのプランに対し、基本料金と電力量料金以外にどの調整金が適用されるかを示したのが以下の表である。
| 燃料費調整 | 電源調達調整 | 容量拠出金 | 再生可能 エネルギー 発電促進賦課金 |
国の補助 | ||
| 東京電力 | アクアエナジー100 | - | - | - | 〇 (同一) |
〇 (同一) |
| 従量電灯B | 〇 (同一) |
- | - | |||
| TERASELでんき | 超TERASEL東京B | - | - | |||
| TERASEL東京B | - | - | ||||
| オクトパスエナジー | グリーンオクトパス | 〇 | - | - | ||
| シン・エナジー | きほんプラン | - | 〇 | 〇 | ||
東京電力、TERASELでんき、オクトパスエナジーの3社は同じ単価で燃料費調整を行っているが、オクトパスエナジーは別の単価となっている。
2025年4月の燃料費調整単価や電源調達調整単価+容量拠出金単価を使って、各プランの電気料金をグラフ化したのが以下である。(契約容量40Aの場合、これ以降も同様)
これを見ると、使用量200~400 kWhでは、きほんプランが最も安く、次にTERASELでんきとシン・エナジー、総じて高いのが東京電力であることが判る。
ただ、これはあくまでも、2025年4月の燃料費調整単価や電源調達調整単価を使った場合である。
次にこれらの単価がどのくらい変動するかを示したのが以下である。
ざっくり言うと、
東京電力、TERASELでんき、オクトパスエナジーが採用している燃料費調整単価(緑)とグリーンオクトパスが採用している燃料費調整単価(赤)はそれほど大きく変動しておらず、その差はおおむね10.5~11.0となっている。一方、シン・エナジーが採用している電源調達調整単価(橙)はJEPXでの取引価格に依存するため変動が激しい。
それでは、各社のプランの料金比較をよりわかりやすくするため、電気料金の計算式を模式化した図を示す。
各社のプランを比較する際は、全プランで一律の「再生可能エネルギー発電促進賦課金」や「国の補助」は無視してよい。
更に、右辺からそれらを除き、電気使用量で割ってみる。
この式で、「料金改定がなければ固定」の部分を、横軸が電気使用量のグラフにしたのが以下である。
このグラフは「料金改定がなければ固定」であり、各プランの基本料金+電気料金部分の固定的な金額を表している。実際の電気料金は、これに燃料費調整単価や電源調達調整単価+容量拠出金単価が加算されるので、結局、図5での差と図3での単価差の合算になる。
例えば、図3の説明で、TERASELでんきの燃料費調整単価とグリーンオクトパスの燃料費調整単価の差はおおむね10.5~11.0(後者の方が高い)と書いたが、図5で、使用量600kWhでは、超TERASEL東京Bは36.14、グリーンオクトパスは26.72で後者の方が9.42安いだけなので合算すると超TERASEL東京Bの方が安く、その差は300kWh以下でないと追いつかないように見える。
一方、超TERASEL東京Bときほんプランを比較すると、図5での差は図内に記したように、使用量200kWhで10.8、600kWhで9.2 きほんプランの方が安い。一方、図3での差は月により大きく変動しているが、直近の2025年5月と6月では差は7を切っているので、(その2ヶ月は)きほんプランの方が安いと言える。
これらの結果を見て言えることは、私の使用条件では、現時点ではシン・エナジーのきほんプランが最安のようである。ただ、シン・エナジーの電源調達調整単価は変動が激しいので、それをどう判断するかである。
もし、これらの不安定要素を排除するのであれば、超TERASEL東京Bとなる。
アクアエナジー100は燃料費調整がないということで燃料高の時にはよい選択肢であったが、燃料費調整単価がマイナスで低位安定している現状を考えると、他へ乗り換えるのが正解のようである。
では。
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